EC物流倉庫とは?特長からメリット、選び方のコツまで徹底解説!

  • ENTRY:2023.11.13.Mon
  • UPDATE:2023.11.15.水
物流倉庫

ECでは物流倉庫が必要不可欠です。物流倉庫があることで、消費者に商品を円滑に届けることができています。この記事では、そんな物流倉庫の種類や業務内容、メリット・デメリットについて解説します。物流倉庫について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

EC物流倉庫とは?

EC物流倉庫は、EC事業における物流の中で、商品の保管から出荷までを行なう施設のことです。近年、消費者がインターネットを通じて商品を購入するのが当たり前となったことで現在、EC需要が増加しています。これに伴い、大小さまざまな企業がD2Cのような形でECに参入していますが、自社で物流業務に対応することはコストやスペースの観点から難しいというのが実情です。そうした課題を解消してくれるのがEC物流倉庫です。EC物流倉庫では、ECで取り扱う商品の保管や在庫の管理だけでなく、入出荷、流通加工などの物流業務まで一貫して対応できるところに特徴があります。

EC物流倉庫の特長

EC物流倉庫には、次のような特長もあります。

基本は個人宅(toC)への出荷がメイン

EC物流倉庫では、個人向けの商品を扱う割合が高い傾向にあります。これは、インターネットで購入された商品を扱うのがEC物流倉庫の主な業務で、そのほとんどが個人の顧客のためです。一般的に企業向けの商品を扱うBtoB倉庫では、出荷パターンが一定で細かい調整が必要ないことが多いです。しかし、BtoC倉庫では出荷方法や伝票などが注文内容や送り先によって変わることが多く、BtoB倉庫よりも複雑な作業が求められます。顧客の属性に応じて業務内容が変わるということを理解しておきましょう。

多品種少量での在庫管理が多い

EC物流倉庫は、小規模な出荷や急な物流ニーズにも柔軟に対応できます。月間出荷数が1000件以下の事業者やネットショップを運営している個人、季節やキャンペーンなどで流通加工が必要になる事業者にとって、EC物流倉庫は最適な選択肢となります。また、EC物流倉庫は、多様な種類の商品を取り扱うことができます。アパレル製品はもちろん、雑貨、日用品、電化製品、さらには温度管理が必要な冷蔵・冷凍商品や食品、飲料なども対応しています。

さまざまな流通加工に対応している

EC物流倉庫では、さまざまな流通加工に対応しています。EC事業者のニーズに応えるために検品やタグ付け、ラベル貼り、ギフトラッピング、チラシ・DMの封入など、幅広く流通加工サービスを提供しています。また、専門の設備があるEC物流倉庫では、食品やお菓子の加工、包装などのサービスも行なっています。単に商品を保管したり、発送したりするだけでなく、商品に付加価値をつけることも重要視しているのです。これにより、競合他社と差別化できる物流サービスを提供できます。

注文から納品までのスピードが早い

今現在、オンラインショッピングでは、注文した商品が翌日に届くのが一般的となっています。このサービスを提供し続けるために、EC物流倉庫はさまざまな工夫をしています。たとえば、物流業務のオペレーション化や物流拠点のリプレイスなど。また、最新の物流システムや設備を導入しているEC物流倉庫もあります。これらの工夫により、注文から配送までのスピードを早めています。また、オンラインショッピングでは、消費者からの返品・交換の依頼が入ることも少なくありません。このような突発的な依頼についても、EC物流倉庫は迅速かつスムーズに対応できる仕組みを構築しています。スピーディーで良質な物流業務を提供したいEC事業者にとって頼れるパートナーになってくれます。


以上のように、EC物流倉庫にはBtoB向けの物流倉庫にはない、さまざまな特長があります。EC物流倉庫の魅力として覚えておくとよいでしょう。

EC物流倉庫の3つの種類

ひとくちにEC物流倉庫と言っても、その種類は大きく3つに分けられます。それぞれどのような種類なのか、そしてどのような特徴があるのか、以下でご説明します。

物流業務からカスタマーサポート業務まで対応しているタイプ

商品の保管から在庫管理、梱包作業、流通加工、発送といった物流業務に加えて、注文処理や消費者からの問い合わせ対応、返品・返金・交換対応といったカスタマーサポート業務まで一気通貫で対応しているタイプです。「販売主体タイプ」と言われることもあります。このタイプのEC物流倉庫を利用すれば、煩雑な物流業務や時間・労力がかかるカスタマーサポート業務から解放されるので、EC事業者はECをさらに成長させる施策に時間・労力を割けるようになります。

特定の業種に特化しているタイプ

専用の設備を用意することで、一般的なEC物流倉庫では対応できない商品を扱えるタイプです。たとえば、温度管理ができる設備を取り入れることで、品質を一定に保つ必要がある食品や医療品などの商品に対応したり。検針やプレス加工ができる機械を導入することで、流通加工が必要なアパレル商品に対応したり。このような体制構築により、特別な保管や加工が必要な商品を扱うEC事業者から多く利用されています。

倉庫サービスを提供しているタイプ

倉庫サービスを提供しているタイプは、倉庫内で行なわれる特殊な作業に対応している倉庫のことを指します。たとえば、電化製品やパソコンの部品の組み立て、木材やガラス材の切断、生鮮食品のカットといった加工サービスが挙げられます。前述した特定の業種に特化しているEC物流倉庫と似ていますが、こちらのほうが特殊な作業になりやすく、「工場のような倉庫」とイメージするとよいです。特殊な加工に対応してくれる反面、一般的なEC物流倉庫より費用が高くなりやすい面もあります。

EC物流倉庫の業務内容

EC物流倉庫では、具体的に次のような業務が行なわれます。

・入荷検品
・ロケーション
・在庫管理
・ピッキング
・出荷検品
・梱包
・出荷

ひとつずつ見ていきましょう。

入荷検品

入荷検品は、商品が倉庫に届いた際に発注の内容と実際の商品が間違いないか確認する作業です。入荷検品では、以下の点がチェックされます。

・商品の種類や数量、サイズ、色
・不良品の有無(破損や汚れなどがないか)
・バーコードやQRコードなどの有無

不良品は消費者の満足度を下げる要因となります。そうしたリスクを低減するために、入荷検品は行なわれます。その点、入荷検品は物流業務において非常に重要な工程となります。EC物流倉庫は専用の検品システムを導入し、正確に入荷検品ができる体制を整えています。

ロケーション

ロケーションは商品を保管する場所のことを指します。倉庫内の棚や区画など、物理的な位置を示すコードで表されます。つまり、商品の在庫状況を正しく管理するためのシステムというわけです。ロケーションには、次のようなメリットがあります。

・ピッキングの効率化
・正確な在庫管理や棚卸し
・商品の紛失、または誤出荷などのトラブル防止

一般的にロケーションの管理には、バーコードやRFIDなどの技術を用います。これは、商品や棚にラベルを貼り付け、ハンディやスマートフォンなどの端末で読み取ることで、リアルタイムに情報を更新できるシステムです。このシステムに加えて、倉庫内のレイアウトや商品の特性等を考慮のうえ、人の手で最適な配置、搬送ルールを設定し、より良質なロケーション管理を実施します。

在庫管理

EC物流業務の中で最も重要な工程と言えるのが在庫管理です。在庫管理は、商品の品質や数量を管理することで、過剰在庫や欠品のリスクを低減するために行なわれます。これにより、コストを最小限に抑え、顧客満足度の向上、さらには利益に大きく貢献します。そんな在庫管理は、次のようなやり方で実施されます。

・在庫計画:需要やリードタイムなどを考慮して適切な在庫量や発注量を決定する
・在庫管理システム:バーコードやRFIDなどの技術を用いて在庫の状態をリアルタイムで把握する
・在庫分析:在庫量の動きや傾向を分析し、最適化や改善策を検討する

ピッキング

ピッキングは、注文された商品をロケーションから取り出す作業のことです。注文内容をチェックしながら商品を取り出し、出荷検品をする場所まで運びます。ピッキングには主に次の種類があります。

シングルピッキング

シングルピッキングは注文ごとにピッキングする方法です。注文が入ってからすぐにピッキングに入るので、出荷までの時間が短くなります。ただし、都度、ピッキングをするので、作業効率は悪くなる傾向にあります。

トータルピッキング

一定期間内に受けた注文の商品をまとめてピッキングする方法です。複数の注文を一括で対処するため、作業効率は高くなります。ただし、ピッキングに入るまで一定期間あるため、注文から出荷までの時間が長くなることがあります。

出荷検品

出荷検品は、ピッキングした商品と注文内容が相違ないか確認する作業です。具体的には、種類や品質、数量、商品自体をチェックし、不備がないか確認します。出荷検品は誤出荷などのミスを防ぐ最後の工程です。そのため、EC物流倉庫は検品方法やチェックリストなどを明確にしたり、バーコードやQRコードなどの自動認識技術を取り入れたりして、ミスが起きないように徹底した対策を実施しています。

梱包

梱包は、商品を安全に運ぶために箱や袋などの容器に入れる作業です。商品に傷がつかないように、緩衝材やテープなどで固定したり、保護したりします。梱包のやり方は、商品の種類や形状、重量などによって異なりますが、一般的には以下の手順で行なわれます。

①商品を検品し、間違いや傷がないか確認する。
②必要に応じて商品にタグやラベルを貼る。
③商品を箱などの容器に入れる。
④容器の中で商品が動かないように緩衝材を入れる。
⑤容器を閉じてテープでしっかりと封をする。
⑥容器に発送元の住所や名前、電話番号などを記載した送り状を貼る。

梱包は、商品の品質を保つだけでなく、消費者の満足度や信頼度にも影響します。絶対に商品に傷や汚れがつかないように慎重に行なわれます。

出荷

出荷は、梱包した商品を配送業者に引き渡す作業です。EC物流業務の最終段階で、消費者に商品を届けるために重要な工程となります。出荷のスピードによって消費者の満足度が変わります。出荷作業は効率的かつ正確に行なわれます。

EC物流倉庫を利用するメリット

物流倉庫を活用するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

倉庫の維持費や設備投資費などを抑えられる

自社で物流倉庫を保有すると、さまざまなコストがかかります。倉庫を借りる際のイニシャルコストや、賃貸料、人件費、光熱費といったランニングコスト、さらには物流管理システムの利用料など、多くの部分で支払いが生じます。物流倉庫を活用すると、それらのコストを抑えることができます。

物流の専門知識やノウハウを持ったスタッフに任せられる

自社に物流ノウハウがない場合、イチから覚えていく必要があり、多くの時間や労力がかかります。物流倉庫を活用すると、物流の専門知識を持つスタッフが物流業務を代行してくれるので、時間や労力をかけずに効率よく物流業務を運用できます。また、誤配送などのミスが起きにくくなるというメリットもあります。

販売促進にリソースを集中できる

物流倉庫では、商品の保管や配送を外部に委託することで、自社のスペースや人員を節約できます。また、物流倉庫のネットワークを利用することで、地域や国境を越えたビジネスの展開が可能になります。これにより、売上や利益の拡大につながります。

物流倉庫を活用するデメリット

物流倉庫の活用には、次のようなデメリットもあります。

物流ノウハウの蓄積ができない

物流倉庫を活用すると、物流サービスはすべて委託することになるので、物流に関する知識や経験を蓄積していけません。たとえば、自社の在庫管理や発注計画の最適化が難しくなったり、物流コストの削減や品質の向上につながる改善策を見つけにくくなったりします。また、物流倉庫に依存しすぎると、サービスの品質や費用に不満があっても簡単に変更できなくなります。

物流倉庫の選定に時間がかかる

物流倉庫にはさまざまな種類があり、特徴もそれぞれで異なります。また、物流倉庫と契約する際には費用的な部分のほか、保管方法や出荷方法などのサービス品質も比較することが重要になります。さまざまな要素を比較検討したうえで最適な物流倉庫を選定するため、どうしても多くの時間がかかってしまいます。

EC物流倉庫の選び方

EC物流倉庫を選ぶ際は、複数の業者から話を聞いたり、見積もりを取ったりするのがおすすめです。ここでは、業者の比較検討の際にチェックしておきたいポイントを解説します。

倉庫の立地

EC物流倉庫の選び方で最も重要なポイントのひとつが倉庫の立地です。倉庫の立地は、配送スピードやコストなどに大きく影響します。たとえば、需要が多い大都市圏やその地域に近い倉庫を選ぶと、物価の影響などでコストが上がりやすいですが、配送スピードが早いことで、消費者の満足度向上につながったりします。このように倉庫の立地は、EC物流業務の効率性や品質に影響するものですので、慎重に検討することがおすすめです。

倉庫の規模

EC物流倉庫の選び方では倉庫の規模も重要です。倉庫に収納できる商品の種類や量などを確認すれば、委託できる商品や数量が把握でき、今抱えている課題を解決できるかどうか判断しやすくなります。たとえば、倉庫の規模が小さすぎると、使用できる保管スペースが少なく、在庫が不足しやすくなり、消費者に納期を遅らせたり、キャンセルをお願いしたりするリスクが高くなります。一方で、倉庫の規模が大きすぎると、商品の在庫が過剰となり、資金繰りや在庫管理にコストがかかりやすくなります。このような倉庫選びの失敗を防ぐためにも、預けたい商品の種類や量、特性を考慮のうえ、それを問題なく保管できる倉庫を選ぶようにしましょう。

倉庫の設備

どのような商品でも問題なく保管できる設備が整っているかどうかもチェックポイントです。たとえば、冷蔵・冷凍の商品は冷蔵庫などが必要ですし、食品系なら温度管理ができる機器が必要になります。もし、これらの設備がなかったり、不十分であったりすると、委託した後に後悔してしまいます。失敗したからといって、簡単に物流倉庫をリプレイスすることもできません。自社の商品を問題なく保管できる設備が用意されているかどうか、事前にしっかりと確認するようにしましょう。

倉庫の費用

倉庫の利用に際してどれくらいの料金となるかチェックすることも大切です。倉庫の費用は、倉庫の規模や立地、設備、サービスなどによって異なりますが、一般的には、商品の数量や使用面積、重量、使用期間に応じて料金が決まり、それを月額で支払うシステムとなっています。この費用は、都心部やそれに近い地域では高くなりやすいです。また、冷凍・冷蔵倉庫や危険物倉庫など、特殊な設備や管理が必要な場合は、通常の倉庫よりも費用がかかります。このような特徴を把握したうえで、物流倉庫を選ぶことが重要です。

倉庫のサービス内容

EC物流倉庫によってサービス内容は異なります。たとえば、ある物流倉庫は入荷から出荷までのいわゆる物流業務に対応しているが、ある物流倉庫は物流業務に加えて問い合わせなどのカスタマーサポート業務まで対応している、というように物流倉庫ごとでサービスの提供範囲が違います。一般的には充実したサービスを提供している物流倉庫が評価が高い傾向にありますが、重要なのは「何をして欲しいか」です。それによって最適な物流倉庫も変わってきますので、物流倉庫に求めるサービスを洗い出したうえで、自社の課題を解決してくれる物流倉庫を探してみましょう。

まとめ

EC物流倉庫を活用すると、煩雑な物流業務から解放されます。物流にかけるリソースをほかの業務、たとえば、販売促進のための施策に割けるようになったりするので、EC事業のさらなる成長を実現しやすくなります。物流業務に課題がある方は、ぜひ前向きに物流倉庫の利用を検討してみてください。