【失敗は成功の元の素】002:その人材、いま必要ですか?

こんにちは、Hakutsuです。

30年ぐらいビジネスの世界を漂っているとわかるようになってくることがあります。
そのひとつが

ビジネスの現場にはまるで対極の能力を持つ2つの人種が存在する

ということです。

その名も「ゼロイチ人材」と「イチヒャク人材」。

前職では入社時15名のベンチャーが2000名のグローバル企業に成長するのをその渦の中で体験しました。辞めてからは半ばフリーランスのような立ち位置で、組織活性化や採用コミュニケーションのお手伝いとして上場企業からスタートアップまでさまざまな会社に首を突っ込んできました。

その他、個人商店のような会社や非チェーンの飲食業など、まあいろんな形態の事業組織を渡り歩いているうちにわかったんです。

会社社会にはゼロイチ人材とイチヒャク人材がいる…ということが。

聞いたことある人もいるでしょう。そんなもんしっとるわ、という方もいると思います。すみません。が、まあ、聞いてやってくださいな。

ゼロイチ人材とは

文字通り「0(ゼロ)を1(イチ)に持っていく」のが得意な人。馬力あり、勢いあり、むしろ勢いしかない。不可能を可能にするのが好き。チャレンジが好き。困難であるほど燃えるタイプ。メンタル強め。イノベーター。

プロダクトを持つスタートアップの創業者なんか典型的なゼロイチ人材だったりします。それまで全くなかった概念やサービスを立ち上げるその思考力、エネルギーは常人には理解し難い面も。

最近では新しい組み合わせを発見し、そこから事業へ持っていくスタイルの起業家も増えていますが、同じくこのタイプに当てはまるでしょう。

どちらかというと無鉄砲だったり、やんちゃだったり。我が道を行く人たち。チームワークより和を乱してでも己を貫く孤高の存在。100%自責。当事者意識の塊。セルフスターター。逆に指示命令の縛りがキツイとしんどくなってしまいます。

ベンチャーのアーリーステージではめっぽう重宝します。こういう人たちの集まりを外からみるとワチャワチャしてたり、会社は学校じゃねえんだよ味が強く感じられるものですが、スピード感とパワーでどんどん事業を推進していくので実力で黙らされる感じが心地よいです。

イチヒャク人材とは

文字通り「1(イチ)を100(ヒャク)に伸ばす」のが得意な人。どちらかというと冷静沈着タイプが多いかも。汎用化、効率化が大好き。ムダが大嫌い。好きな言葉はレバレッジ。一石二鳥、三鳥を良しとする。ある意味商売人。そろばんずく。

ベンチャーよりは中堅から大手企業で多く発掘されます。それまでなかったマニュアルやルールを策定し、再現性の高い業務フローを構築。見える化、仕組み化によって社内のバグがどんどんきれいになっていくとき、そこにイチヒャク人材がいると言っても過言ではありません。

法令順守。品行方正。決められたことをきちんと守るタイプ。勢いはないが確実、着実に成果をあげる。そして安定路線に載せようとするので、数字のアップダウンが胃に堪える経営者からはめちゃくちゃ重宝されます。

ベンチャーがグロースしていく過程では欠かせない、というかあるフェーズを境に、ほとんどの社員がこのイチヒャク人材に移り変わっていくのが定番です。つまり絶対数も多いわけです。組織の規模でいうと100人超えると増えてきます。上場後なんかもどこからともなくやってきます。

なにか問題があるのか

いや、特に問題はないんですけど、採用の現場では意識しておくべきことかなと思っています。つまり20名未満の、社員が出たり入ったりしている段階で必要なのはゼロイチ人材です。

そのタイミングでイチヒャク人材をいれちゃうと速攻コンフリクト起こしますね。指示も何もない、制度も風土もめちゃくちゃだ、と不満を抱えて辞めていきます。採用する側、される側、どちらも不幸でしかない。

一方でいい感じでグロースしてきて、社内のゼロイチ/イチヒャク比率が後ろに荷重されつつあるときにゼロイチを外からいれてもこれまたハレーションを起こすでしょう。意外とつまらん、とか、大企業病だ、みたいな批判の末にやはり辞めていきます。

なので採用するときは自社のフェーズがどのあたりにあるのか、今後数年でどうなっていく予定なのかをよく見極める必要があります。

やっぱり問題はありそう

と、ここまで書いていて、そうだ!あの問題があるわ…と思い至った。それが「ゼロイチ人材いらなくなる事案」です。悲しいかなベンチャーのアーリーステージ期を支えてきたゼロイチ人材が、その成長とともに役割を終えるという、国鉄のディーゼル車みたいな存在になりかねない問題。

まあ、当然といえば当然です。自分がかつていた会社もおもしろいぐらい立ち上げ期に活躍した人材たちが居場所を失って去っていきました。ぼくもその一人なのでよくわかります。

当時、その会社のトップは去っていくゼロイチ人材たちを指して「会社が大きくなって甘えが出た」とか「慢心して成長が止まった」「ストックオプションで満足してしまった」なんて言ってました。違いますね。そもそも能力適性が異なるわけです。

ルールづくり、マニュアルづくりに精を出さなきゃいけないときにワチャワチャ勢いだけで突っ走る人は、そりゃいらないわとなるわけです。とはいえ本当に大変な時期に血反吐を吐いて徹夜でがんばってきた切り込み隊長たちを無下に切り捨てるのは人道的にどうなのだしもったいない。

ではどうしたらいいのか

ぼくがこの現状を打破するべく考えた打ち手は3つ。ひとつは社内に新規事業を作り続けること。これはとてもいいんじゃないのって思います。リソースの最適化にもつながるし。当たればふたたび収益の柱。やってる本人たちも失敗などを恐れるタイプじゃないのでパフォーマンス発揮できるのではないでしょうか。実際にやってる会社もたくさんあるでしょうね。

もうひとつはアーリーステージで人手が足りてない、なおかつ伸びる可能性のあるベンチャー企業に出向や転籍させる。この時点での社長さんは会社がある程度グロースしているので業界をまたいで俯瞰してみる余裕も出てきているはず。経営者同士のネットワークを駆使して、会社が後ろ盾になって転職支援するわけです。

そして最後に「教育」です。ぼくは残念ながら頭が悪いので、どういうカリキュラムが適切なのかわかりません。ただ知っている限りではゼロイチ人材をイチヒャク人材にシフトする教育をやっている会社を見たことないです。それってつまり体系化して考えられていないからで、頭のいい人なら必要スキルや思考パターンを抽象化したのち共通項を見出して学習カリキュラムを構築できるんじゃないでしょうか。しらんけど。

さいごに

さすがにいまどき人材使い捨ての考えを持った経営者や会社はない、と思いますが、スタートアップを離陸させたあと、ちょっと寂しそうな顔をして会社を去っていく人をいまだに目にします。

まあ、そういう人は立ち上げ屋としてのプライドがあるのかもしれないし、また自分の力で新たなアーリーステージを見つけるのかもしれません。もともとバイタリティの塊ですし。

でも、できれば会社側もがんばってくれた社員に報いたいですよね。社員は会社に、会社は社員に、恩を感じて返そうとする。そのサイクルが上手くまわることが、これからの会社組織には必要ではないか。

だとしたらゼロイチ人材のイチヒャク化、あるいは活躍の場を意図的に用意することは令和4年の立派な経営課題ではないかと思うんですよね。違いますかね。大きなお世話ですかね。

※ハヤカワヒロミチのnoteより転載

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