【失敗は成功の元の素】001:コンテンツマーケティングが上手くいかない理由
こんにちは!hakutsuです。
華々しく(?)はじまりました連載『失敗は成功の元の素』、
記念すべき第一回は、これまでさまざまな企業のバックオフィス担当役員から責任者、さらには現場のみなさんの頭を悩ませてきた「コンテンツマーケティング」について取り上げます。
いま挙げられたみなさんは、いったいコンテンツマーケティングの何に頭を悩ませているのでしょうか。
その答えは、ズバリ、思うような成果が得られない あるいは リソース不足で続かない ではないでしょうか。
いまから5年ぐらい前、サイボウズ式やLIGの成功を見て猫も杓子も「コンテンツマーケティング」と言い出しました。似たようなバズワードとして「バイラルマーケティング」「オウンドメディア」があります。が、いずれも引き波のように遠く太平洋の彼方に去っていきましたね。
で、残ったのが名前ではなく、手法というか企業がやりたいこと。
裸の姿になるとわかりやすいのですが、要はできるだけ金をかけずに自社のファンを増やしたいんですよね。そして売上を伸ばしたいというかLTVの最大化を図ることが生き残りの王道である、とか考えているんですよね。
「社長、それって結局コンテンツマーケティングですよね」
みたいな会話をあちこちでしている今日この頃なのであります。
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わたしは過去、数十社からコンテンツマーケティングの相談を受けてきました。
もちろん自社においてもチャレンジした経験があります。
その過去の経験から、以下の考え方や体制では絶対にコンテンツマーケティングは上手くいかない、と断言できます。さっそくご紹介していきましょう。
①半年から1年ぐらいで効果が出ると思っている
これ、ネットリテラシーが低いか感覚がひと世代レガシーな経営者や役員によくある勘違いです。勘違いというか妄想といってもいい。コンテンツマーケティングというのはマーケティングという名称から間違われやすいのですが、はっきりいって販売や営業向けの取り組みではありません。どちらかというとブランディングに近いと思ったほうが正しいでしょう。
そう考えれば納得ではありませんか?イブサンローランは半年でいまの地位を築いたか?アップルは?ナイキは?コカ・コーラは?スターバックスは?マクドナルドは?ソニーは?アマゾンは?ユニクロは?キリがないのでこれぐらいにしておきますが、いずれの企業も自社ブランドを確立するのにそれ相応の時間をかけています。もちろんコストも、リソースも。
それをやらずしてなぜあなたの会社だけ半年や1年でコンテンツマーケティングが上手くいくのでしょうか。意味がわかりません。
②外部の会社に丸投げすればいいと思っている
金はあるけどリソースが…という会社にありがちな選択です。ですが、これは大きく失敗する可能性を孕んでいます。なぜか。
まずひとつはその会社のことはその会社の社員がいちばん詳しいから、ということが言えます。いくらハンズオンでやりますと業者が言ったとて、毎日その会社に通うわけにもいかないでしょう。と、なるとどうしてもエラーというか拾いきれないネタが出てきます。逆にそれがない会社って生きてるの?と心配になりますね。
そしてスピード感。ネタを拾って形にして関係各所のチェックを受けて掲載する。この一連の流れが淀みなくできなければコンテンツマーケティングは難しいでしょう。それに外部の制作会社がどこまで対応できるか。おそらくですが、途中で心が折れて急に更新頻度が下がる、みたいなことになるんじゃないかと(経験談)。
③社内の担当者は新人一人ぐらいしか割けない
まあ、割いてもらえるだけマシなのかもしれませんが。何がよくないかというと経営サイドの腰の引け方ですね。覚悟のなさというか。「海のものとも山のものともわからない、金になるかどうかも見えないものなんだから、まあ生産性の低い新人にでもやらせとけ」感が透けてみえます。
そしてそういう経営陣の下でスタートするコンテンツマーケティングというのは①を求められるわけです。半年後、1年後にどこかの数字を見て「伸びてないじゃん」「ハイ終わり」となるんです。これ、はっきりいってコンテンツマーケティングが悪いんじゃないからね。経営サイドの認識と姿勢の問題です。
もし自社の体質がこれに近いものがあるのだとしたら、コンテンツマーケティングには手を出さないほうがいいと思います。もっといえばブランディングのリニューアルも表面上でロゴを変えたり言葉をいじったりするだけで、本質的に機能することはないので、やはりやらないほうがいいかと。
④可視化できないバリューに対する理解が低い
コンテンツマーケティングが生み出す効果というのは目に見えるものばかりではありません。また先述の通り、短期的に結果につながるわけでもありません。コツコツと継続することでじわじわと消費者の心に届き、あるとき店頭でふと思い出してくれる…そうして商品を手に取ってくれるというケースがかなりのウェイトを占めるのではないかと思います。
つまり時間差があるし、売上数字との直接の関連性がどこまであるかは正直見える化数値化ができない世界なのです。ちなみに余談ですが先日NRIの主席と呑んでいたとき「見える化とかいう経営者って何が見たいんでしょうね?きっと見えたときにそれじゃないっていうんでしょうね。見えないものがあるからこの世の中は平常なのに」と面白いことを言っていました。
閑話休題。それゆえ直接の貢献結果しかジャッジしない、ただ単に判断のスコープを絞っているだけなのに、それを成果主義だと勘違いしている会社もまず間違いなくコンテンツマーケティングがドリフトします。
⑤現場は業務優先であるべき
これもほんとうにいつも出てくる問題です。現場は営業である場合と開発である場合があります。ときどき管理部門が守られることがありますが主に決算期です。いや、おっしゃることはよくわかります。数字優先、開発優先、決算優先。それに比べたらコンテンツマーケティングの取材だなんてね。そんな一銭にもならないことに割けないですよね、リソースを。
でもですよ、これ、状況が一変しても同じこといえますか?現場の営業マンが何人束になってもかなわないぐらい効率よく営業活動ができるようになったら、それもコンテンツマーケティングのおかげでそうなったら、どうします?っていうかそもそも目指してるのってそこじゃないですか?
営業などしなくても、日本中、いや場合によっては世界に同時に情報を届けられるのがインターネットですよね。このプラットフォームを活用してコンテンツマーケティングは行われるわけですよ。そのときに今月の数字だの、開発リミットだの(いやそれは大事だけど)そっちばかり優先していていいんでしょうか?
これも態度というか姿勢が問われるところだと思うんです。
⑥インセンティブの設計がされていない
いつもとても勉強になるnoteを書いている久松剛さんという方がいらっしゃいます。この久松さんのnoteに引用されていた記事をさらに引用します。なぜTechブログは続かないのか、という問題提起です。もうここに全て書いてあるので僕は何も言わなくていいかって思ってます。
テックブログは続かない
このnoteの特に「まとめ:社内ブログ・テックブログをどう捉えるべきか」を読んでください。ここにインセンティブ設計の難しさとヒントが書かれています。
⑦極端なリスクヘッジ体質
上記の久松さんのnoteにもあるように、社内チェックをしないとNGです。しかしその縄を強くしすぎると今度は執筆者にとって書くことへのハードルが異様に上がります。プロでもそうなんですから、社内のメンバーに書いてもらうものにまで赤ペン先生の気分でメタメタに修正を入れてしまっては…。
赤を入れるときのポイントは「ダメ出しではなく、よりよくする提案」「炎上リスクを防ぐ」「数値や事実ベースの正確さ」この3点に押さえるべきでしょう。
ところがキャリアの浅い人事や総務、なりたての広報がいざチェックする側に回るとなぜか「指導者」に豹変するさまをぼくは過去いくつも見てきました。「またはじまったか…」とやれやれ感に苛まれるのですが、社内でこれをやられるとたちまちモチベーションが下がってしまうでしょう。
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と、まあ第一回目から3500文字を超える大作となってしまい、この先が早くも思いやられているのですが、まあ仕方がないでしょう。わたしの過去のサポート経験からするとコンテンツマーケティングに失敗する企業には①~⑦はこのうちのいずれかがあるのではなく、ほぼ全部併せ持つという特徴がありました。
もし心当たりある!となったら、それが改善できそうかどうかを判断して、もし難しければ早めに撤退モードに入ったほうがいいと思います。別にコンテンツマーケティングなんか全ての企業ができなくたっていいですし、そもそも2社に1社は20年続かないわけです。