DM発送とメール配信の違いとは?適切な手法を選ぶポイントも解説

ECマーケティングで顧客にアプローチする際、DM発送とメール配信のどちらを選ぶべきか、悩む場面もあるのではないでしょうか。
「費用は抑えたいけれど効果も欲しい…」
「スピーディーに届けたいが到達率も重視したい…」
など、相反する悩みを抱える場面も少なくありません。DMとメールにはそれぞれ異なる強みがあり、商材や顧客層によって適した手法は変わるため、両者の違いを把握しておく必要があります。
この記事では、DM発送とメール配信の違いについて解説します。どちらのマーケティング手法を選ぶかお悩みの方は、ぜひお役立てください。
目次
DM発送とメール配信
DM発送(ダイレクトメール発送)とは?
DM発送とは、企業が顧客へ直接郵送するマーケティング手法のことです。商品カタログや割引クーポン、季節の挨拶状など、形あるモノとして情報を届ける手法であり、EC事業者の間でも広く活用されています。DMの種類は、主に以下の3つに分類されます。
- はがきDM
- 封書DM
- 圧着DM
「はがきDM」は、比較的少ない費用で発送できる点が特徴です。「封書DM」は、複数の資料を同封できるため、新商品の詳細カタログやサンプルを送る際に役立ちます。「圧着DM」は、めくって中身を見る仕掛けが、開封する楽しみを演出し、開封されやすい傾向にあります。
ECサイトでは、会員ランクに応じた特別な案内や、誕生日特典の送付などに活用されます。手元に形として残るDMは、デジタル情報にはない特別感があります。そのため、紙媒体を好む顧客層の心に響きやすい手法と言えます。
メール配信とは?
メール配信は、インターネットを通じて顧客のメールボックスへ直接メッセージを送るデジタルマーケティング手法のことです。DMに比べて費用を抑えられ、大勢の顧客へ情報を届けられる点がメリットです。
メール配信には、主に以下の4つの種類があります。
- メールマガジン
- メールマガジンは、企業やサービスが定期的に配信する情報提供型のメールです。新商品情報、キャンペーン告知、ニュースなどを一斉送信し、幅広い読者にアプローチします。継続的な配信により、ブランド認知や顧客との関係構築に効果的で、顧客との接点を保つ重要な手法です。
- ステップメール
- ステップメールは、あらかじめ設定したシナリオに基づき、特定の順番で自動的に送信されるメールです。ユーザー登録や資料請求などをきっかけに、教育・関係構築・購買促進を段階的に行なうことが可能です。顧客育成(リードナーチャリング)に最適で、CVR(コンバージョン率)向上に役立ちます。
- セグメントメール
- セグメントメールは、顧客データをもとに属性や行動履歴でユーザーを分類し、それぞれに適した内容を送るターゲティング型メールです。性別・年齢・購入履歴・興味関心などに基づくため、顧客ごとに最適な情報を届けられ、開封率やクリック率の向上が期待できます。パーソナライズ重視の施策に有効です。
- トリガーメール
- トリガーメールは、ユーザーの行動や状況に応じて自動的に送信されるメールです。たとえば、会員登録後のウェルカムメール、カート放棄時のリマインドメール、誕生日クーポンなどがあります。ユーザーに最適なタイミングで情報を届けられるため、購買促進や顧客満足度向上に効果的です。
DM発送とメール配信の主な違い
DM発送とメール配信、両者にはどのような違いがあるのかチェックしていきましょう。
コスト
DM発送にかかるコストの内訳
DM発送にかかる費用は、複数の要素で構成されます。主な内訳は以下の表の通りです。
費用の種類 | 内容 | 料金の目安(1通あたり) |
---|---|---|
デザイン制作費 | DMのデザインや企画にかかる費用 | 2円~30円 |
印刷費 | はがきや封筒、中身の印刷にかかる費用 | はがき:10円~ / 封書:20円~ |
郵送費 | 郵便局や配送業者に支払う費用 | はがき:85円~ / 封書:110円~ |
作業費 | 宛名印刷、封入、発送代行にかかる費用 | 5円~20円 |
これらの費用は、DMの形状(はがきか封書か)、サイズ、色数、発送する通数、紙の質など、さまざまな条件で変動します。たとえば、発送通数が多ければ多いほど、郵送費の割引制度が適用されて1通あたりの単価が安くなる傾向にあります。トータルコストを考える際は、どこまでの作業を自社で行ない、どこからを外部に委託するのかを明確にするとよいでしょう。
メール配信にかかるコストの内訳
メール配信にかかる費用は、主に「初期費用」と「月額費用」で構成されます。
費用の種類 | 内容 | 料金の目安 |
---|---|---|
初期費用 | システム導入時に一度だけかかる費用 | 0円~100,000円程度 |
月額費用 | 毎月継続的にかかる費用。料金プランによる。 | 定額制: 3,000円~ 従量課金制: 1通0.1円~ |
その他費用 | オプション機能の追加や制作代行など | 都度見積もり |
月額費用は、登録アドレス数や配信数に応じて決まる「定額制」と、配信した通数分だけ費用が発生する「従量課金制」の2つが主流です。1通あたり数十円からの費用がかかるDM発送に比べ、メール配信のコストパフォーマンスは高いと言えます。初期費用が無料のサービスも多く、手軽に始めやすいのが特徴です。また、必要に応じてHTMLメールの制作代行など、追加の費用が発生する場合もあります。
効果
次にそれぞれの効果について見ていきましょう。
DM発送の到達率と反応率
DM発送は、住所が正確であれば高い確率で顧客の手元に届きます。メールのように、迷惑メールフォルダへ自動的に振り分けられてしまう心配がありません。
日本ダイレクトメール協会の最新調査によると、自分宛てのDMを「読んだ」と回答した人は約62%にのぼります。さらに、DMがきっかけで何らかの行動を起こした人は約20%にのぼり、購買につながる反応も期待できます。
紙媒体のDMは、顧客の記憶に残りやすく、購買行動を後押しする要因となっている可能性があります。
参考:一般社団法人 日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2024」
メール配信の開封率とクリック率
メール配信の効果を測る指標に開封率やクリック率があります。これらは、DMの閲読率には及ばないものの、配信の速さと費用の抑えやすさを考えれば、十分な費用対効果が期待できます。一般的に、メールの開封率は業界によって異なりますが、平均して20%前後と言われます。クリック率は、そこからさらに数%程度になるのが実情です。
ただし、これらの数値はあくまで目安です。魅力的な件名や、顧客に合わせた配信タイミングの工夫で、数値を高める余地は十分にあります。過去の購入データから関連商品を提案すると、クリック率が高まる傾向にあります。配信後すぐに効果を測ることができ、改善につなげやすい点もメール配信の強みです。
パーソナライズとセグメンテーション
次に、それぞれのパーソナライズとセグメンテーションについて見ていきましょう。
DM発送でできるパーソナライズ施策
DM発送の魅力は、顧客一人ひとりに合わせた「特別感」の演出しやすさです。顧客ごとに一部の情報を差し替えて印刷する「バリアブル印刷」という技術を活用すると、購買履歴に応じておすすめ商品を変えたり、顧客の名前を印刷したクーポンを同封したりできます。
「顧客の購入金額によって割引率を変える」「誕生月に特別なデザインのカードを送る」などの施策も有効です。顧客の住む地域に合わせて最寄り店舗の情報をのせれば、オンラインと店舗での購買を結びつけられます。上質な紙を使ったり特殊な加工を施したりすることで、ブランドのイメージアップにもつなげられます。
メール配信でできるパーソナライズ施策
メール配信では、リアルタイムの行動データにもとづいた、きめ細かいパーソナライズが可能です。顧客がサイトで閲覧した商品や、カートに入れたまま買わなかった商品情報をすぐにメール内容へ反映し、個別に最適化したメッセージを自動で送ります。
商品の閲覧履歴から関連商品を推薦するメールは、売上向上に貢献すると言われます。顧客の購入サイクルを分析し、再購入が見込まれる時期に商品を提案するメールも効果的です。件名や本文に顧客の名前を入れるだけでなく、「会員ランク別の特典案内や地域の天候に合わせた商品提案」「誕生日を祝うクーポンの送付」など、一人ひとりの状況に寄り添った配信が実現できます。
実施フローと注意点
次に、それぞれの実施フローと注意点について解説します。
DM発送の実施手順と納期調整のコツ
DM発送を成功させるには、計画的な準備と納期管理が重要です。通常、企画立案から発送までは数週間を要するため、デザイン制作、印刷、郵送準備などの各工程にそれぞれ時間が必要です。
特に重要なのが、発送のタイミングです。週末に届くように調整すると、平日に比べて時間に余裕を持って見てもらえるため反応が良くなるとされています。
また、給料日後などを狙うと、購買意欲が高い顧客にアプローチできる可能性があります。納期を調整するコツは、印刷会社と早めに打ち合わせることです。
繁忙期を避けることで、コストを抑えられる場合もあります。宛名データに誤りがないか事前にしっかり確認し、住所不明で返送されることがないようにしましょう。
メール配信のシナリオ設計と配信ツール選び
メール配信では、顧客の行動や属性に応じたタイミングと内容の組み合わせを考える「シナリオ設計」が重要となります。たとえば、新規会員登録後には数日間にわたって商品の魅力を伝え、購入後には使い方を案内するなど、顧客の状況に沿った設計が必要です。
配信ツールを選ぶ際は、自社の目的と予算のバランスを考えなければなりません。月額数千円から利用できるツールもあれば、高機能なプランも存在します。EC事業者であれば、購買データと連携できるツールを選ぶことで、売上につながる配信がしやすくなるでしょう。
システム同士を連携させるAPIという仕組みがあれば、在庫状況などをリアルタイムでメールに反映させることも可能です。A/Bテスト機能や詳細な分析レポートが充実しているツールを選ぶと、継続的な改善に役立ちます。
どちらを選ぶべき?DM発送とメール配信の選定ポイント
この章では、自社の状況に合わせて最適な手法を選ぶためのポイントを解説します。ターゲット層や予算、かけられる手間などを総合的に見て判断しましょう。
ターゲット層で選ぶ
DM発送とメール配信の選定では、まずターゲット層を考慮することが大切です。たとえば、シニア層は物理的な郵便物に慣れ親しんでいるため、DMの開封率が高い傾向にあります。一方で、デジタル機器の利用に慣れた世代は、スマートフォンでメールを確認する習慣があるため、メール配信のほうが情報を届けやすいです。
また、商材によっても向き不向きがあります。高級ブランド品など「特別感」を演出したい商品はDMが適しており、日用品のリピート購入を促すには、タイムリーに情報を送れるメールが有効です。ターゲットのライフスタイルや情報収集のスタイルを判断し、適切な手法を選びましょう。
予算に合わせて選ぶ
予算に合わせた手法の選択では、初期投資と運用コストの両面から検討することが大切です。少ない予算から始めやすいのはメール配信です。DMに比べて1通あたりのコストが低いため、多くの顧客にアプローチできます。
一方、DMは1通あたりの単価が高めですが、高単価商品や優良顧客向けに絞って送ることで、高い投資収益率(ROI)が期待できます。
EC事業の成長段階に応じて、まずは低コストのメール配信で顧客基盤を広げ、売上が安定したらDMを組み合わせる戦略も有効です。
スピード感で選ぶ
施策のスピード感を重視するなら、メール配信が適しています。メール配信は、企画から配信までを短時間で完了できるため、突発的なセールや在庫処分など、スピード感が求められる施策に向いています。急な天候変化に合わせた商品提案や、競合の動きへの対抗策も、すぐに実行に移せるのも魅力です。
DM発送は、企画から顧客の手元に届くまで数週間の準備期間が必要となります。印刷や郵送の工程があるため、緊急性の高いキャンペーンには向きません。季節商品の案内など、計画的なプロモーションであれば、じっくり準備できるDMのほうが高品質な訴求につながります。
パーソナライズ度で選ぶ
アナログな特別感を演出したいならDM、リアルタイム性を重視するならメール配信が向いています。パーソナライズの度合いは、顧客満足度につながる重要な選定基準です。
DM発送では、バリアブル印刷技術により、顧客の名前や購買履歴を反映した個別のデザインが可能です。物理的な質感や特殊加工による演出はDMならではの魅力であり、ブランド価値の向上につながります。
一方、メール配信の強みは、リアルタイムの行動データをすぐに反映できる点です。商品閲覧履歴やカートに商品が残っている状況に合わせて、自動でメールを送れます。どちらの手法を選ぶかは、商材の価格帯やブランドイメージによって判断するとよいでしょう。
手間とリソースで選ぶ
運用の手間を抑えたいならメール配信、リソースをかけて丁寧に行なうならDM発送が向いています。DM発送は、デザイン制作から発送手続きまで、多くの工程を管理しなければなりません。外注する場合でも、業者との打ち合わせや品質の確認に時間を要します。
一方、メール配信は配信ツールの自動化機能により、作業を大幅に効率化できます。テンプレートを活用すれば、配信準備は短時間で完了します。ただし、効果的なメール配信には、継続的なデータ分析やテストが欠かせません。
限られた人員で運営するEC事業者なら、まずは自動化しやすいメール配信から始め、余裕が出てきたらDMを併用するのもおすすめの手法です。
まとめ
DM発送は、費用がかかる一方で、高い閲読率と物理的な存在感による訴求力が魅力です。対してメール配信は、低コストで即時に配信できる点が大きな利点となります。手法を選ぶ際は、ターゲット層の特性、予算規模、必要なスピード感、パーソナライズの度合い、そして社内リソースの5つの観点から検討することが重要です。どちらか一方に限定せず、両方を組み合わせた戦略も効果的な選択肢となります。ぜひ、この記事を参考にしながら最適な手法を選択してみてください。