余剰在庫とは?発生する原因や対策について徹底解説
余剰在庫は保管費用や資金繰りに悪影響を与える可能性があります。そのため、商品の保管状況を定期的に確認し、適切な対応を検討することが大切です。この記事では、余剰在庫の特徴や原因、対応策について解説します。在庫の状況を把握し、管理の方法を見直すためにも、ぜひ参考にしてください。
余剰在庫とは?
余剰在庫とは、需要に対して供給が上回った結果、企業が抱える在庫のことです。生産が多すぎたり、需要予測が外れたりすることが原因で発生します。
在庫が余ると、保管に必要なコストが増えたり、資金の効率的な運用が妨げられたりと、さまざまな悪影響が出てきます。そのため、物流業務では可能な限り、余剰在庫を対策することが大切です。
余剰在庫を防ぐためには、適切な在庫管理や需要予測の精度を向上させることが重要になります。
余剰在庫と滞留在庫の違い
余剰在庫と滞留在庫の違いは以下のとおりです。
余剰在庫 | 滞留在庫 | |
---|---|---|
意味 | 需要予測を上回って保有している在庫 | 一定期間以上動きのない在庫 |
発生原因 |
・過剰な発注 ・需要予測の誤り ・季節変動の見誤り |
・商品の陳腐化 ・市場ニーズとのミスマッチ ・商品管理の不備 |
対策方法 |
・需要予測の精度向上 ・発注量の適正化 ・在庫の他店舗への転送 |
・在庫の早期処分 ・商品の見直し ・販売戦略の再構築 |
在庫コストへの影響 |
・保管コストの増加 ・資金の固定化 |
・長期保管コストの増加 ・商品価値の低下 |
リスク | ・比較的短期的なリスク |
・長期的な損失リスク ・廃棄の可能性が高い |
余剰在庫は主に需要予測の誤りから発生する一時的な問題である一方、滞留在庫は商品の市場性や管理の問題に起因する長期的な課題です。
また、余剰在庫は適切な対策を講じることで比較的早期に解決できる可能性がありますが、滞留在庫は商品価値の低下や廃棄リスクを伴います。
そのため、滞留在庫のほうが深刻な問題と言えます。
余剰在庫の3つのデメリット
余剰在庫は企業にとって大きな負担となります。
ここでは、余剰在庫がもたらす3つのデメリットを解説します。
販売価格の低下や廃棄につながる
余剰在庫は、販売価格の低下や廃棄の原因になります。余剰在庫を抱えている場合、需要よりも供給が上回っている状態なので、通常価格では売れ残ってしまうのです。
販売価格を下げても売れない場合は、最終的に廃棄となります。廃棄にはコストや手間がかかるため、適切な在庫管理を行ない、余剰在庫を未然に防ぐことが重要です。
保管スペースの有効活用ができない
過剰な在庫は、売れ残り商品が倉庫スペースを占有することで、保管スペースの確保が困難となります。これにより、在庫回転率が低下します。
この状態が続くと、販売機会を損失することが増え、顧客ニーズに対応できなくなります。顧客の信頼を損ね、顧客離れにつながってしまうため、早急に対策をとることが必要です。
在庫の保管コストがかかる
余剰在庫を抱えると、倉庫スペースを圧迫し、保管スペースの有効活用ができなくなります。在庫保管には、主に次のようなコストが発生します。
- 倉庫の賃借料
- 光熱費や設備維持費
- 在庫管理のための人件費
- 商品の品質維持に必要な経費
これらの保管コストは、商品の販売価格が下がっても一定額かかり続けます。そのため、時間の経過とともに商品価値が低下すると、売上に対する保管コストの比率が上昇していきます。このような状況を防ぐには、需要予測の精度向上や在庫回転率の管理が重要です。
キャッシュフローが悪化する
余剰在庫を抱えると、キャッシュフローが悪化します。売れ残りが大量に発生すると、売れない在庫に資金が固定化されることで、キャッシュフローにも影響を及ぼすからです。
キャッシュフローの悪化は、事業運営に大きな支障をきたします。そのような事態を防ぐためにも、在庫管理システムを改善し、適切な在庫量を維持することが大切です。
余剰在庫が発生する原因
そもそもなぜ余剰在庫は発生するのか?
その原因を解説します。
需要予測の失敗
需要は、市場動向、競合他社の動き、経済状況、天候など、多くの要因に左右されるため、正確に予測するのは容易ではありません。需要予測が外れると、必要以上の在庫を抱えることになり、余剰在庫が発生してしまいます。つまり、需要予測の失敗は、直接的に余剰在庫の発生につながるのです。
需要予測の精度を高めるためには、過去のデータ分析に加え、市場トレンドや消費者動向を的確に捉える必要があります。AIやビッグデータ活用など、最新のテクノロジーを導入することも有効な手段といえるでしょう。
販売戦略の問題
価格設定やプロモーション戦略の失敗が、余剰在庫を生む要因となる場合があります。たとえば、高すぎる価格設定により需要が見込めず、在庫が売れ残ってしまうことがあります。逆に、安売りや過剰なプロモーションで一時的な売上増加を狙っても、結果的に在庫が余ってしまうこともあります。
価格とプロモーションのバランスを取るには、需要予測にもとづいた適切な戦略立案が求められます。消費者の価格感度や競合他社の動向を見極め、適切な価格とプロモーションを組み合わせることが重要です。
在庫管理の非効率性
在庫管理の非効率性は、余剰在庫を引き起こす原因のひとつです。たとえば、小売業界では、需要予測の難しさから過剰な発注が行なわれ、売れ残りが発生するケースが多くあります。
また、アパレル業界では、トレンドの変化が速いため、市場動向を見誤ると大量の不良在庫を抱えてしまう危険性があります。さらに、食品業界では、需要と供給のタイムラグによる生鮮品の廃棄ロスが深刻な問題となっているのです。
これらの課題に対する解決策として、サプライチェーン全体でのデジタル化と情報共有が挙げられます。自社の規模や特性に合わせて、段階的に改善を進めていく必要があるといえるでしょう。
返品が増える
返品された商品が倉庫に滞留することで、新規商品の保管スペースが圧迫され、効率的な在庫管理の妨げとなることがあります。返品を増やさないためにも、予防的な対策をすることが大切です。
まず、商品説明においては、色やサイズ、機能などの特徴を正確に記載します。過度な表現や誇張を避け、消費者が適切な判断を下せる情報を提供するよう心がけましょう。
また、品質管理の面では、入荷時と出荷時の2段階での検品体制を整えることをおすすめします。これにより、入荷時には製造段階での不具合を、出荷時には保管中に生じた問題を発見することができるでしょう。
このような対策を取ることで、返品が減り、在庫管理の最適化につなげられます。
余剰在庫になりやすい商品を扱っている
余剰在庫になりやすい商品を取り扱っている場合も、在庫を抱える原因となります。
余剰在庫になりやすい商品は、次のとおりです。
- 季節商品
- トレンドに影響される商品
- 保存期間に制限がある商品
- 競合が多い商品
- 需要が低い商品
- 大量生産が必要な商品
このような商品を扱う際は、過去の販売データを分析し、需要の変動パターンを把握することが大切です。
さらに、在庫状況を定期的にチェックし、販売の進捗に応じて価格設定や販促方法を見直しましょう。商品特性に応じた取り組みを行なうことで、適切な在庫管理につなげられます。
余剰在庫を減らすための対策
ここからは、余剰在庫を減らすための対策について解説します。
需要予測の精度を上げる
需要予測の精度を向上させるためには、適切なデータの収集と活用が重要な要素となります。
まず、社内データとして、これまでの販売履歴や在庫の推移、顧客の購買パターンなどの情報を集めることが考えられます。また、外部の要因として、その商品に関連する市場の動きや、季節的な影響なども把握しておくと良いでしょう。
需要予測の精度を高めていく過程では、予測と実際の結果を比較し、なぜ違いが生じたのかを確認することが有効です。この振り返りを通じて、次回の予測により良い示唆が得られる可能性があります。
状況に応じて柔軟に改善を重ねていくことで、需要予測の制度を高めていけるでしょう。
適切な在庫管理システムを導入する
在庫システムを導入することで、商品の動きをより正確に把握できる可能性があります。
実際に新しいシステムを検討する際は、まず自社の現状と課題を整理することから始めましょう。商品の保管場所が複数ある場合は、それぞれの在庫状況を一元管理できる機能が備わっている在庫システムを選択するのがおすすめです。また、すでに使用している会計ソフトなどとスムーズに情報をやり取りできるかどうかも、確認しておくのがポイントです。
システムの導入後は、万が一の時に備えて、サポート体制もチェックしておきましょう。システムを提供する会社によってサポートの内容は異なりますので、事前に比較検討することをおすすめします。在庫システムを導入することで、より効率的に在庫を管理することが可能となります。
余剰在庫を処分する
商品の在庫を整理する際は、まず保管状態や商品の状態を確認しましょう。そのうえで、商品の特性に応じた対応を検討することをおすすめします。
衣類などの季節商品の場合、時期が過ぎた商品の販売方法として、価格を見直すことが選択肢のひとつです。
食品の場合は、商品の期限に余裕がある時期から、販売方法を工夫することが有効な場合があります。複数の商品をまとめて販売することや、食品を必要としている施設などへの提供を検討すると良いでしょう。
なお、在庫の整理を行なう際は、関連する法律や規則に従い、適切な方法で対応することが大切です。
まとめ
余剰在庫は商品の保管コストや資金の固定化につながることで、企業運営に悪影響を与える問題です。自社の状況に合わせた対策を実施し、適切な在庫管理を実現しましょう。