EC物流の課題とは?改善のポイントまで解説

EC市場が拡大する中で、物流業務は顧客満足度や売上に直結する重要な要素となります。しかし、在庫管理の煩雑化や配送遅延、返品対応、コスト増加など、多くのEC事業者が物流面で課題を抱えるケースも増えています。
本記事では、そんなEC物流における代表的な課題とその解決策を解説します。物流課題を解決し、万全な物流体制を構築したい方はぜひ参考にしてください。
目次
EC物流でよくある課題
在庫管理が複雑化する
EC事業ではSKU(在庫管理単位)の増加に伴い、在庫管理が複雑化しやすくなります。商品点数が多くなると、どこに何がどれだけあるのかを正確に把握することが難しくなり、過剰在庫や欠品のリスクが高まります。
また、WMS(倉庫管理システム)を導入していない場合、手動管理では情報更新が遅れ、在庫データと実在庫にズレが生じることもあります。結果、受注後に欠品が発覚したり、不要な在庫を抱えたりすることになり、コストや顧客満足度に影響を及ぼします。
誤出荷が発生する
ピッキング作業の精度が低下すると、誤った商品や数量を出荷してしまうリスクが高まります。特に繁忙期には注文数が急増するため、倉庫作業のキャパシティ不足からミスが起きやすくなります。
また、複数の配送業者を利用している場合、ラベル貼付や送り状発行などのオペレーションが複雑化し、誤出荷や遅延の原因となります。誤出荷は再送対応や返品処理の手間とコストを増やし、顧客からの信頼低下にもつながります。
返品・交換対応の負荷が大きくなる
ECでは商品破損や誤配送などによる返品・交換の対応が起きることがあります。返品が起きると、在庫への反映が遅れて欠品や過剰在庫を招くリスクが高くなります。
また、返送品の検品や再梱包、再販可否の判断には時間と人員が必要です。そのため、返品率が高いアパレルやコスメなどの業界では特に大きな課題となります。
物流コストが増加する
EC市場の拡大に伴い、物流コストは年々増加しています。配送費用の値上げに加え、保管料や人件費の上昇も大きな負担となっています。
また、小口配送が多いECでは、送料無料と利益率のバランスが課題となり、コスト圧迫の原因になりがちです。特にセール時や繁忙期には追加費用が発生するケースも多く、収益を圧迫します。
配送遅延が起きる
ECでは、繁忙期やセール時に注文が集中すると、倉庫や配送キャリアの処理能力を超えてしまい、配送遅延が発生することがあります。また、在庫管理やピッキング作業に遅れがある場合も、出荷自体が遅れる原因となります。
配送遅延は顧客満足度の低下やクレーム増加につながり、ブランドイメージにも悪影響を及ぼします。
顧客対応が遅れる
配送状況の可視化が不十分だと、顧客からの問い合わせに即時対応できず、サポート体制が逼迫します。
特に注文数が増加する繁忙期は、遅延や誤出荷に関する問い合わせが急増し、対応遅れによる不満が顧客離れの原因となることもあります。
EC物流の課題を解決に導く5つのポイント
WMSを導入し、在庫管理を効率化する
EC物流の課題の多くは、在庫管理の複雑化が招いています。WMS(倉庫管理システム)を導入し、在庫状況をリアルタイムで把握できる体制を整えましょう。そうすることで、在庫データと実在庫のズレを防ぐことができます。
また、入荷から出荷までの情報を一元管理することで、在庫精度が向上するだけでなく、欠品や過剰在庫のリスクも低減できます。
さらに、棚卸業務の効率化やロケーション管理の最適化も実現でき、スタッフの作業負担が大幅に軽減します。特にSKU数が多いECでは、システムの導入が業務効率化の鍵になると言えます。
ピッキング・出荷精度を改善する
誤出荷を防ぐためには、ピッキングおよび出荷工程の精度を上げることがポイントです。ハンディ端末を活用したバーコードスキャンや、自動仕分け機の導入により、人的ミスを削減しましょう。
また、ピッキング方式の最適化も重要です。単品注文が多い場合は「シングルピッキング」、複数注文をまとめて処理する場合は「トータルピッキング」など、業態に適した手法を導入することで効率が向上します。
加えて、オペレーションの標準化とスタッフの教育を徹底することで、繁忙期でも安定した品質を保つことができます。
配送サービスの品質を向上させる
EC事業では配送品質が顧客満足度を左右します。複数の配送業者を使い分け、最適なコストとリードタイムを確保しましょう。また、配送状況をリアルタイムで追跡できるシステムを導入し、顧客への通知を自動化することで、問い合わせ対応の負担を軽減できます。
さらに、発送拠点を複数配置して出荷リードタイムを短縮する「分散型物流」や、当日配送・翌日配送などのサービス拡充も、競争力向上に効果的です。ただし、配送遅延や破損を防ぐための梱包品質の向上も欠かせません。
返品・交換プロセスを最適化する
返品や交換の対応はEC物流における大きな課題のひとつです。返品処理の遅延は、在庫データの精度低下や欠品・過剰在庫を招く原因となります。これを解決するには、返品専用のシステムを導入して処理を効率化し、WMSと連携させることがおすすめです。
返品受付から在庫反映までを迅速に行なえる仕組みを構築することで、顧客対応のスピードと在庫管理の精度が向上します。また、返品理由を分析して商品不良や誤出荷などの原因を特定し、改善策を講じることで、長期的な返品率削減にもつながります。
物流業者(物流アウトソーシング)を活用する
自社での物流運営が難しい場合は、3PL(サードパーティーロジスティクス)やフルフィルメント業者に物流業務を委託するのもおすすめです。専門の業者に物流業務を委託することで、倉庫保管から出荷までを一括で管理でき、固定費を変動費化しやすくなります。
また、最新のWMSや自動化設備を備えた業者であれば、高精度かつ効率的な物流サービスを期待できます。繁忙期や急な需要変動にも柔軟に対応できる業者であれば、在庫リスクを抑えつつ、顧客満足度を高めることも可能です。自社のリソースをコア業務に集中させたい場合に有効な選択肢となります。
まとめ
EC物流では、在庫管理の複雑化や誤出荷、配送遅延、返品対応、コスト増加など多くの課題が存在します。これらを解決するためには、WMSの導入による在庫管理の効率化や、ピッキング精度の向上、配送品質の強化、返品プロセスの最適化、そして専門の業者への委託が効果的です。適切な改善策を導入することで、顧客満足度を高められます。ぜひ、高品質な物流体制を構築するためにも物流課題を解決していきましょう。